転校生の鹿目まどかです 1話

2電撃少女

 

イラスト:電撃少女さん

 

眠たい……。

朝一学校の机で寝るのが日課になりつつある。

昨夜も遅くまで、街をまわってたからほとんど寝てなくて。

このところ魔獣の気配が止まない。

 

他の魔法少女である美樹さやか、そして巴マミと協力して三人で戦うことが多くなっていた。

以前のようなギスギスした雰囲気もなくて、戦いの中だけであれば良いチームであると思う。

しかし佐倉杏子はその中にいない。

この世界では何故か彼女とだけ関わりがない。

多分、風見野にいるとは思うのだが……。

けれど三人の戦いに苦戦しているわけではなかった。

わざわざ彼女に会いに行くつもりはない。

それにしても今日は教室がいつも以上に騒がしい。

なにかあったのかしら?

 

 

ほむら「おはよう美樹さやか。随分騒がしいようだけど、あなた何か知ってる?」

さやか「アンタ、昨日早乙女先生の言ったこと聞いてなかったの?」

昨日……?

そう言えば、帰りがけに何か連絡していた気がするけれど……。
さやか「はぁ……アンタ学校に興味なさすぎ」

さやか「仕事に精出すのもいいけどそれ以外のことにも目を向けなよ」

ほむら「余計なお世話よ。いいから用件だけ答えてくれないかしら?」

さやか「転校生がくるんだってさ」
転校生?

もうすぐ冬休みというこの時期に、随分と珍しい。

そうか…… だからみんなそんなに騒いでいるんだ。

わたしはこのクラスには何度も転校してきた身で、
土地柄……と言えるのかわからないけど、珍しいものに興味を持つ人が多いのは確かだと思う。

彼、あるいは彼女もこのクラスの”手荒い歓迎”を受けるのだろうか?

私には到底理解できない。

話しかけたいとか、まして友達になろうなどという気がどうし て起きるのか……。

さやか「お、先生きたよ。どんな子だろうね」

ほむら「……」

さやか「だんまりかよ。まあいいけどね」

 

和子「皆さん、おはようございます」

和子「お知らせしていた通り、転校生を紹介したいと思います」
――今日は前置きはないのね。

私の時はいつも下らない話を聞かされて、教室の前に立たされたものだ。

卵の焼き加減だったり、何をかけて食べるだのそんな話。

ほんとう……どうでもいい。

和子「それじゃ、入ってきて。どうぞ~」

もちろん興味などなかった。

最前列の後ろから届く黄色い声に加わることなどありえない。

ありえないはずだった……。

廊下の半透明のガラス戸からその姿が見えるまでは。

 

1もっぴーな

 イラスト: もっぴーなさん

ほむら「まどか……?」

まさか……そんな……そんなはずはない。

紛れもない私のただ一人の友達『鹿目まどか』がそこにいた。

まどか「初めまして、転校生の鹿目まどかです」

さやか「おい、転校生……あの子もしかして」

ほむら「少し黙ってなさい。」

さやか「焦ってるところを見ると、やっぱりアンタが前に話してくれた子で間違いないみたいだね」

魔法少女を導く存在となったまどか。

その彼女がなぜこんなところに……。

和子「じゃあ志筑さんの隣が空いてるから、そこへ座って頂戴」

まどか「はい」
ひと通り の自己紹介を終えたまどかは、空席となっていた後方へ促される。

私はもう一度まどかを凝視した。

するとどうだろう、彼女もこちらを……私を見つめている。

2胃超弱男(修正前)

 

イラスト: 胃超弱男さん

私のことがわかるの……まどか?

本当に貴女なの?

私は喜んでいいの?

まどか……。

 

授業が終わり、私は席を立ち上がり後ろを見渡した。

まどかと話がしたい……。

……が、 既に彼女はクラスメイトたちに囲まれていた。

生徒「ねぇ、ねぇ、鹿目さんてどっから来たの?」

!?

sample1

イラスト: やんじカツさん

 

あんな人、クラスにいただろうか?

基本無関心だから、私が覚えてないだけか……

いるものはいるのだろう。仕方ない。

生徒「部活とかやってたの?あたしバレー部なんだけど…」

早速勧誘めにされて……あれではひとたまりもない。

とにかく確かめないと……。

でも、あの中に入っていくのはなんか気が引けてしまう。

 

さやか「こらぁああああああ!!!群がるなぁ~!」

生徒「わわわ……」

4みまさと

イラスト: みまさとさん

よくやったわ、美樹さやか。

多分彼女と過ごしてきた中で今が一番感謝しているだろう。

まどか「あ、あの……」

さやか「へへ、お礼はいいよ。えっと…名前なんだっけ?」

まどか「鹿目まどかです」

さやか「うん、まどか。これからよろしくね」

さやか「私さやか。美樹さやか。呼ぶときはさやかでいいよ」

まどか「さやか……ちゃん」

さやか「うんうん。いいよいいよ~まどか」

あれ……?

忘れてる?

まるで初対面のやりとり。

美樹さやかがまどかの事を覚えてないのは仕方ないとして、まどかはわたしたちのことを覚えていないの?

――確かめたい。

ほむら「ちょ、ちょっといいかしら?」

5みまさと

 イラスト: みまさとさん

 

さやか「ん、転校生?アンタから声をかけてくるなんて珍しいじゃん?」

まどか「さやかちゃん転校生って…?」

さやか「ああ、こいつは暁美ほむら。ちょっと前に転校してきたのさ」
ほむら「……よろしく」

まどか「えっと…よろしくね、暁美さん」

あけ…み…さん……

いや…期待なんてしていなかった。

この子が、私のことを覚えているかもなんて…
ほむら「それじゃ、また……」

まどか「あっ……」

 

何をやってるの?

せっかくあの子に会えたかもしれないというのに…

いつも通り……いつも通りじゃない!?

あの子が初めて私の名を口にするときは、決まって『暁美さん』と呼ぶ。

なのに、どうして涙が止まらないのだろう?

期待が落胆に変わり、打ちひしがれてしまったのだろうか?

そんなはずない。

頭の中はまどかが私を呼ぶ、その声でいっぱいだった。

彼女の声が……まどかの声が、私の中に響いてきて。

それが瞼の先を曇らせて…。

 

 

私はその日、まどかに近づくことができなかった。

話しかけたくても顔を合わせられなくて……。

 

結局、あの子は誰なんだろう。

たまたままどかと似た子が入ってきたなんて、そんなはずがない。

だとすると、あの子は…

この世の果てからやってきたの?

その手段は明確にすることはできないけど……。

でももし彼女が、その役割を放棄したのであれば大変なことにならないかしら?

念のためマミにも知らせておくべきだ。

いざとなった時に、彼女たちの協力が必要だろう。

 

 

 

まどかが転校してきてから数日が経った。

世界に何か異変が起きたのではないかとも考えたが、今のところ何の影響もない。

まどかの登場とともに、魔女が現れるなんてことはなかった。

まどかなぜは私の前に現れたのか?

いや…そんなことより……

ほむら「はぁ…」

――まだあれから全然しゃべれてないわ…

――今日も美樹さやかたちと一緒にご飯かしら…

あの子のことが気になって仕方がない。

――これはそう…やっぱりあれかしら。

ずっとまどかを守っていた時にあの子を見ていたせい……

――その癖がまだ抜けていないのね、きっと…

 

7胃超弱男

 

イラスト: 胃超弱男さん

 

まどか「あ、あの」

ほむら「えっ、まどか?」

まどか「え?まどか?ってあの……暁美さん?」

 

8胃超弱男

 

イラスト: 胃超弱男さん

しまったいきなり話しかけられたせいで思わず名前で……

まどか「……」

――ああ…やっぱり驚いてる…

ほむら「か、鹿目さん……何かわたしに用?」

まどか「……」

まどか「ふふふ…」

笑った……?

ほむら「何がおかしいのかしら?」

まどか「暁美さんてみんなの前ではすごくクールなのに」

まどか「なんで私と話して、そんなに慌ててるのかなって」

 

9胃超弱男

 

イラスト: 胃超弱男さん

ほむら「なんでって……」

ほむら「まど…鹿目さんに急に声をかけられてびっくりしただけ」

まどか「あ、もしかして…め、迷惑だったかな」

ほむら「いえ…」

ほむら「声をかけてくれて嬉しかった……」

まどか「 本当!?  よかった!勇気だして声かけて」

まどか「よかったら、今日一緒にお弁当食べない?」

まどか「暁美さんともっとお話ししてみたいな」

ほむら「ええ。鹿目さんがそう言ってくれるなら」

 

 

10ももだま

 

イラスト: ももだまさん

まどか「さっきはびっくりしたよ。いきなり名前で呼び捨てなんだもん」

ほむら「素敵な名前の方が頭に残ってたから、そっちが咄嗟に出てしまったのよ」

まど か「あ、ありがとう」

我ながらよく上手いいいわけがでてくるものだ。

伊達に時間を繰り返してきてはいないということか……。

ほむら「よかったら、鹿目さんのことは名前で呼ばせてもらっていいかしら?」

まどか「うん、いいよ!私もほむらちゃんて名前で呼んでいいかな?」

ほむら「ええ……」

本当にやり直せるのかしら……?

まどかとの出会いを……初めから?

胸がじんじんいっている……。

私、期待してるんだ。

――でも……私の知ってるまどかと違うかもしれない。

 

少し探りをいれてみる必要があるわね。

ほむら「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど…」

 

 

 

 

11ぼっち

 

イラスト: ぼっちさん

まどか「ほむらちゃんたら、すごいんだよ」

さやか「どうしたの?」

まどか「私の家族のこととか、好きな食べ物のこととか…なんでもいい当てちゃうんだ」

さやか「気をつけな、もしかしたらこいつに後ろからつけられてるかもしんないよ」

さやかは事情を知っててこれだから手に負えない。

ほむら「バカなこと言わないの。たまたま当たっただけよ」

少し探りをいれたつもりだったけど、変に疑われてしまった。

でも、おかげでこのまどかのことがわかった。

趣味も、思考も、家族も、今までと同じ。

まどか「ほむらちゃん?どうかしたの?」

ほむら「いえ、なんでもないの」

まどか「悩んでることがあったら、何でも相談してね」

まどか「って、今日お友達になったばかりなのに、    馴れ馴れしいかな?」

まどか「なんかほむらちゃんとは   初めて話した気がしなくて…」

まどか「そんなわけないんだけどね」

ほむ ら「………」

まどか「私も遠いところから来たし、ほむらちゃんも全然違うとこから来たんだもんね」

さやか「前世で生き別れになった、友達とか?」

まどか「そんな感じかもね」

少し、期待してしまった。

過去のつながりを。

もし二人の時間を分かち合うことが出来たらと……。

けれど、この子は本当に何も知らない。

魔法少女のことも、自分が世界を変えたことも……。

それならそれで構わない。

ほむら「美樹さやかも、まどかも、ずいぶんな詩人さんなのね?」

まどか「もう~、笑うなんてひどいなぁ~」

ほむら「そういうの素敵だと思うけれど?」

まどか「でも全然信じてないでしょ、ほむらちゃん」

さやか「こいつは超現実志向型人間だからね。仕方ないよ」

…そんなこともないわよ。

まどか「それじゃあ、私こっちだから!」

さやか「おう、またね、まどか~」

ほむら「また明日」

まどか「ばいば~い」

 

 

さやか「かえろっか…」

ほむら「ええ…」

12白子

 イラスト: 白子さん

さやか「この話してた、世界を変えた魔法少女ってさ……」

さやか「……あの子なんでしょ?」

さやか「そのリボンを貰ったっていう……」

ほむら「そうよ」

さやか「普通の女の子に見えるけれど?」

ほむら「……そうね」

さやか「アンタが嘘をつかないって思ってるから聞くけどさ」

さやか「……なんであの子は願ったんだろう?」

さやか「神様なんて、すごく退屈そうだよ……」

ほむら「そうね……」

ほむら「まどかが自分のために、願いをかけたことなんて一度もなかった」

ほむら「そうなる運命だったとしか言いようがないわね」

さやか「……すごい子だったんだね」

さやか「私の親友は」

ほむら「ええ…」

さやかはまるで遠い日の思い出を探すような目で、空を見上げた。

大切な友達を失ったことを、悲しんでよいのかわからない……そんな目で。

一方私は、地べたを見つめていた。

まどかが少しでも自分のことを考えてくれればよかったのに。

でも……。

もし、自分のために願いを使うとしたら

まどかはいったいどんな望みを叶えたんだろう?

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